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貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい
* * * * * * *
二年前の春だった。
新卒社員達に向けた研修が終わった時期だったから、ひなたが配属されてきた時は、予想外だった。
「甘利さん、今度みんなで貴女の歓迎会しようと思ってて、出来れば平日。いつなら予定空いてるかな?」
「良いですよぉ。私なんかのために、皆さんのお時間使わないでもらわなくても」
「ううん。時間とってもらうのは、こっちの方。これから何年かお世話になるし、早い間にお互い知っておきたいんだけど……」
「私のことなんか知っても、何の特にもなりませんよ」
ひなたの口振りは、クリアブルーのラメが煌めくぽってりとしたピンク色の唇が紡ぎ出すものとは思い難いほど、頑なだった。
ひなたが打ち解けてくれなくても構わなかった。
幸いここの店舗はつれない新人をなじるような文化はなく、多少コミュニケーションに個性がなくても、稀に見るほどTenue de bonheurのイメージに嵌まるひなたの容姿は、客が購入を決める有力な決め手となっていた。
彼女の人物像も掴めないまま二ヶ月が過ぎると、せりな達も業務上の会話しかしなくなり、あたしもなるべく踏み込まないよう意識していた。