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貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい



 部屋に着き、あたしはひなたをリビングに座らせて、じゃがいもの冷製スープを除く作り置きの惣菜をレンジで温めていった。

 アイスティーと麦茶を訊くと、彼女は後者を所望した。あたしも久し振りの日本茶にする。ペットボトルを開けると、真夏を先取りした香りが上った。



 その日から、ひなたは口数が増えた。

 慣れないものを出された時の子猫のように、常に透明な難い壁を張り巡らせながらも、睦のバーで夕餉を一緒にとるようになったのもこの頃からだ。


「睦さんって、カッコイイですよねぇ」


 ある夜、あたしはひなたを部屋に呼んでいた。
 睦も彼女を気に入っているようなところがあったから、毎日寄り道しても良いくらいだけれど、外食が続くと隣に住む母の小言を聞かされるからだ。


「ああいう人も好き?」

「嫌いじゃないです。女の人は対象外でしたけど、男だからって幸せにしてくれるとは限らないこと、あの件で思い知りましたので」

「ちなみにひなたの幸せって、結婚?」

「私だけを愛して欲しいとは、思います。それに親にショック受けさせちゃったんで、いつかはしないと……」

「ひなた自身は、乗り気じゃなさそう」

「今は、寂しい方が大きいです。道端でイチャつく人達を見ると、割って入って邪魔したくなるくらい」
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