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貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい





 半年前の男を引きずっているにしては、ひなたはキスしても全く負の感情を示さなかった。


「ひなた、……」

「ん……」


 キスを深めて、薄い唇の向こうに並んだ白珊瑚の壁をこじ開ける。
 口内は、桃の香りが充満していた。触れているのか分からないほどの加減で口蓋や歯茎をくすぐって、舌を絡める。


「ぁっ、高垣さん……はぁっ……」


 深夜近い無音の部屋で、唾液のじゃれ合う音が、やたら耳に大きく響く。


「一人で閉じこもってても、寂しいままだよ。変わらないものなんかないと思う。そんな薄情な当たり前のために、ひなたがいつまでも一人でいることないんだよ」

「でもぉ……」

「自慰よりずっと、寂しさから逃してあげる。これで彼女になれなんて言わないから。元々、何年でも待つつもりだったし」

「本気、だったんですかぁ……?」

「あんな大事なこと、ひなたに口を開かせるためだけに言わないよ」

「ぁっ、……ん」


 水彩風の花柄が散るカットソーの膨らみを撫で回しながら、あたしはひなたの唇や頬や鼻先を啄んでいく。
 どこもかもが甘くて綺麗だ。マシュマロのように柔らかで、脂身の少ない魚のようにしなやかなのだろう身体を早く見たくて、あたしは彼女を脱衣させていく。
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