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貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい
「叔母さん……久し振りですね。偶然です」
「他人ヅラしてんじゃないわよ!この薄情母娘の片割れがっ!!」
「お客様、他のお店にご迷惑ですので……」
「離せ!私が用があるのはこの女よ!!弟を見捨てやがって……全然不幸になってないじゃない、謝れーーー!!」
せりなが女を──…厳密には、あたしの父親の姉に当たる叔母を取り押さえた。
「莉世、警備員さん呼んで」
「あの、叔母さん……帰ってもらえたら大ごとにしませんから……」
せりなの腕の中で暴れながら、叔母は決死の覚悟で田舎を出てきたのだと言って聞かない。
十六年前、あたしの両親は離婚している。と言っても母が一方的に離婚届を置いて、あたしを連れて家を出たのだ。
当然、引っ越し先は知らせなかった。母方の親族の手伝いもあって、父が仕事へ行っている間に荷物をまとめて出てきたからだ。当時高校三年生だったあたしは進学先も父達には話していなくて、行方をくらますにはちょうど良く、登校日数も残り僅かな学校側には事情を話して、彼らにはとりあわないよう頼んでおいた。