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貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい


「響さんみたいに綺麗な人からのナンパなら、歓迎です。あたしは好きです、そういうの」

「本当?貴女に接客してもらうのが楽しくて、お店にお邪魔しているのもあるんです。迷惑でしょうか」

「いいえ。響さんこそ綺麗で明るくて、ウチの従業員とも噂していたんですよ。実はどこかのセレブなお姉様なんじゃないかって」


 冗談めかしてあたしが返すと、爽やかで洗練された相好が崩れた。

 かくいう響も、かなり化粧は研究していると思う。
 今日はオレンジがかった赤みの強いアイカラーに、チークはピンクからブラウンにかけてのグラデーション。巧みな色使いは肌に馴染み、元の手入れが良いせいか、薄化粧にさえ見える。

 つと、響が名刺を差し出してきた。よく見ると、連絡先がメモしてあるだけの紙切れだ。


「困ったことがあれば、連絡下さい」

「え……」

「さっきの人、お知り合いですよね?私は怖い方面の人達との繋がりはないけれど、厚意で動いてくれる刑事や弁護士や政界の人くらいなら、連れて来られると思います」

「有り難うございます。でも、……」
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