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貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい
* * * * * * *
藁にも縋る思いで莉世に頼んだあゆみの勉強の面倒は、結果、私の期待を上回った。
進学塾は、ショートテストでも上位に入った生徒の名前が貼り出される。それまで理数系は特に伸び悩んでいたあゆみが、初めてそこに名前を連ねられたのだ。
その知らせを受けたのは、あゆみを迎えに行った時のことで、本人ではなく私は鴨山さんに聞かされた。家政婦に家事を任せていることをいつも鼻にかけている彼女は、なるほど手先まで白く綺麗で、その時もフェミニンなオードトワレまで匂わせていた。
「お母さんって、まだ莉世さんと連絡とってるの?」
翌朝、食卓に着くなりあゆみが開口一番、私に問うた。
大雅が洗面所から戻るまでにこの話を打ち切りたくて、私は手短に頷いた。
「へぇ、親友って本当なんだ。お母さん、一番仲良かった人は田舎に行ったって話していたから。嘘かと思った」
「あゆみ。高垣さんと連絡とってること、お父さんには内緒ね」
「何で?」
「関係のない友達を娘の受験に巻き込んだなんて知られたら、お父さんにどんな顔をされるか分からないから。あゆみだって、彼女とはまた会いたいって言ってたでしょう」
私が語調を強めたからか、何かしらを察したからか、それきりあゆみは手を合わせると、しずしず朝食に手をつけた。
鼻を刺すほどのシェービングクリームの匂いを撒いて大雅が席に着いたので、私は彼の前にコーヒーを置く。
「おはよう」
「おう」
私も手を合わせると、野菜ジュースで喉を潤わせ、トーストにバターナイフを滑らせる。からりとしたパンの表面がバターでしっとりしてくると、手元に大雅の視線を感じた。