この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい


「それ何だ」

「バター。貴方のはそこよ」

「違う。そのおかしい爪はなんだ」

「おかしいって──…」


 胃の辺りがキュ……とつねられたような不快を追い払うようにして、私はバターナイフを先端が皿を鳴らすほどにはぞんざいに置いた。


 莉世とこじれて三日が過ぎた。彼女に当たったことについては冷静さに欠いていたと、あとになって反省したけれど、彼女が今更この性格を諫めるとは思わなかった。ちなみに悪気もなかったようで、ともすれば私の怒りも伝わらなかったようで、翌日には何事もなかった調子でLINEが届いた。そして今日、偶然休みが一致した私達は、少し会うことになったのだ。

 友人に会うくらいで爪を飾るなど、私が間違っていたのだろうか。


 五分かけて焼いたトーストをものの一分で平らげた大雅は、新聞の所在を私に訊ねた。私は、まだ外気の温度の残った真新しい朝刊を手渡す。


「サラダは?それにスープも。食べてないじゃない」

「食えるかよ。娘の前で、あまりみっともない話をさせないでくれ。……おい、あゆみ。そこにレトルト味噌汁があるから、お父さんの分も入れて」

「味噌汁が良かったの?」

「お前、その爪で作ったんだろ。俺達を殺す気か。着色料、入ってたら気持ち悪いだろ。今日中に拭いておけよ。明日は店なんだからな」


 席を立ち、私はあゆみに朝食を続けるよう言いつけて、二人分の椀をテーブルに並べる。

 水を火にかけながら、鍋の中で小さな気泡が生まれ出すのとは逆に、私の体内は熱を失くしていく。
/254ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ