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貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい
* * * * * * *
正午前、みなぎと駅で待ち合わせした。
前に彼女が化粧させてくれなかった事情について、彼女自身がそうしたことに無関心だからではなかったのだと知り、あたしは溜飲を下げた。ひなたの元婚約者と言い、器の小さな男に限って、何故、女の自由に口を出すのか。
かくてあたしは、夕方メイクオフして構わないからというのを条件に、二週間振りの欲求を満たした。
「わっ……」
「可愛いでしょ。急だったから、化粧直し用しか持ち合わせがなかったからね。ほとんどあたしとお揃いだよー?」
「ピンクすぎませんか……?大丈夫ですか?」
「イエローゴールドも入ってるじゃん。ピンクのアイカラーに目尻だけ黄色入れると、差し色効果で明るみ増すんだ。チークとリップは青みピンク。やばくない?可愛いでしょっ」
類を見ない白いキャンバスを女神の偶像に仕上げると、あたしは彼女の後方に回り、手鏡を向けた。
鏡越しに見る彼女はいつもの落ち着いた雰囲気とは一変して、ゆめかわいくさえある。本人は恥ずかしがっていたアイラインもしっかり入れて、もはや本物の人形だ。髪色の明るさも功を奏している。
「否定はしません。私のような地味な女が高垣さんとお揃いなのは、非常におこがましいですが……高垣さんの腕は認めます」
「硬っ苦しいなぁ。みなぎとあたしの仲じゃーん。食べたくなるほど可愛いのに」
「ひゃぁっ?!」