この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい
「女って、一生の内に、口紅三本は食べるんだって」
「前にも言っていましたね。本当ですか?」
「うーん、多分。とにかくネイルも大丈夫!食べちゃいたいほど可愛いんだから、むしろみなぎの一部なら爪でも髪でも身体に入れたい」
さっき手鏡を握ってそうしていたのと同様に、あたしはみなぎの肩を抱いて、鏡に棲む彼女を覗く。
みなぎの手が、私の片手に重なった。
「高垣さん、……」
首を回し、顔を向けてきたみなぎの目に吸い寄せられるようにして、あたしは彼女に鼻先を近づける。
無意識か目蓋を下ろした彼女の唇をキスで塞ぐ。ブルーラメの混じったピンク色の唇は、心ゆくまで口づけても、きっとキスの痕跡が残らない。何せあたしと揃いのグロスだ。
「んっ、んぅ」
「みなぎ、可愛い……やっぱり、みなぎのキスが一番好き……」
「上手いこと言って……そういうこと、陽キャは言い慣れてるんでしょ……?」
「陽キャじゃないって、何度、言わせるの……」
触れるだけのキスを繰り返すみなぎとあたしは、まるで足りない言葉を補ってでもいるようだ。弾力を帯びた肩とあたしの腕に汗が滲む。唇の隙間をこぼれる吐息が、彼女の仄かな香りや熱を、あたしに伝える。
あたしは先日の件を詫びた。気が弱くて臆病なのは、みなぎの処世術でもあって、彼女ほどにもなると強みだ。そういうところにも惹かれているのに。