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貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい
「都合の悪いものは、塗り隠せば良いのかも……知れないわね」
「え……」
「私、悩みは倦怠期じゃないの。井山さんが思い込んで、彼女の勢いに負けて、否定するタイミングを逃して、そういうことになっただけ」
「…………」
「大雅には、きっともう愛してももらっていないんだし。嘘じゃないんでしょうけどね」
笑い話でも披露した調子のみなぎは、幸福かと問えば、きっと頷く。
あたしは指に残った彼女の味を口に含んで、ティッシュに伸ばしかけたそれを、閉じた脚の間に移す。
「ちょっと、莉世……いい加減にっ……」
「拭いて捨てるなんてもったいないから」
「ダメっ、大体、け……結婚したばかりの頃のあの人でも、そんないやらしいこと言わなかったわよ?」
「あたしの方が溺愛してるし」
「もう良い。……じ、自分でやるから……あっち、見てて?」
ティッシュと潤みのこすれる気配に、時折、微かな水音が混じる。
腰の奥がもどかしく疼くのを感じながら、あたしはみなぎに従っていた。
醜いものは塗り隠せば良い。
その通りだ。完膚なきまでに美しい女などきっといない。誰しも人間は人間だ。自分ために生まれてきて、自分のために死ぬ以上、天上のもののようにはなれない。