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貴女に溺れて彷徨う
第2章 醜いものは塗り隠せばいい
みなぎの手料理は、惣菜系ワッフルだった。日本茶を好んでいるのは明らかなのに、比較的どこででも手に入る定番の銘柄のアイスティーまでテーブルに並んでいたところからして、ここまで尽くす才能に長けた女でも男の愛が薄れるのだから、ひなたの件も今更ながら肯ける。
もっとも、全ての男が薄情とは限らない。あたしの運が良かっただけだ。
仮に男がみなぎに熱心なままだったとする。今しがたの情事も、ましてキスすらなかったかも知れない。
「どうかしら……」
「美味しいに決まってる!ワッフルって難しいんでしょ。機械に挟んだら膨らみすぎたり、焼き加減とか」
「自営業だからね。昼休みに家に帰って、研究したり出来るのよ」
「真面目なみなぎにだから出来ることだね。昼休みなんて、スマホ触るための時間かと」
「莉世って、お弁当も作らなさそうよね。今度差し入れてあげましょうか?」
「うそっ!それ興奮する……昼休みにみなぎに会えるのはやばい!」
彼女と一緒に住んでいたらこんな感じだろうか。
かつてひなたにいつまでも待つつもりだと言ったあたしは、彼女のことも、待とうとしている。あゆみが成長して、せめて彼女が母親として満足すれば、あたしに目を向けてくれるんじゃないか。
同じ時を過ごすほど、一時の共有だけでは足りなくなっていく。
第2章 醜いものは塗り隠せばいい──完──