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貴女に溺れて彷徨う
第3章 不自由への憧憬
休暇が不規則な職に就いて、大学時分から交際していた事務職の女との縁が切れた。あたしが予定を合わせるのに困難を感じたからだ。慣れない新生活で、ストレスが溜まりかけていたのも大きかったと思う。
睦のバーを見つけたのは、それから一年ほどあとだった。
個人運営の出会い系サイトで知り合った女と淫らごとに耽ったあと、彼女と飲んで帰ることになり、職場近くに感じの良いバーがあるのを知った。
あたしは一つ歳上の店主と馬が合った。若くして店を立ち上げた睦は、いかにもネコの女が好みそうな容姿をしていた。女を選び放題じゃないか、といったあたしの諧謔に、彼女はその通りだと言って笑った。
「恋って、自分じゃ制御が効かないほど相手が欲しくなってこそ、本物なんだ。理由のない衝動。恋したいって理由を前提に、自分から求めに行く時点で、そこに運命の人はいないと思う」
「莉世はロマンチックだね」
「そういう睦はどうなの」
「恋をイコール幸せ、と結びつけるのはもったいないと思うな。私は誰かを理由にしなくても楽しい毎日にしていたい。一人で成り立つ、もっと絶対的な何かを見つけたい」
「店まで開いて、まだ何がやるつもり?野心家ー」
「全然当てはないけどね」