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貴女に溺れて彷徨う
第3章 不自由への憧憬
口先こそ淡白でも、実際は、睦もあたしも奔放だった。ひとときの愛や快楽を共有するための女は常にいたし、肉体面が満たされるだけ、虚無も感じなかったのだろう。
ある時、二人連れの女達が店に現れた。
掃いて捨てるほど見る感じの客だったけれど、零時を回っていたのもあってか、彼女らは互いの身体に触れ合い、額を寄せ、目と目を交わし、ともすれば公共の場を閨房にでもしかねない、稀に見る大胆さを備えていた。
あたしは一人、睦や常連客らとの無駄話を肴にして、グラスを傾けていた。
睦まやかな一元客など興味ない。じゃれ合いたいなら家かホテルへでも移れば良いのに。
気持ちの上では彼女らとは別次元にいたあたしの耳は、ほぼ全ての会話を聞き取っていた。
女達が帰ったあと、妙な空気があたし達をとりまいていた。
睦もあたしも顔馴染みの客達も、盗み聞きを互いに打ち明け、その内容を議論した。
結果から言えば、通りすがりの女達は主人と奴隷、女王とペットの関係らしかった。
それまで知識として理解していた性癖について、小説やDVDに見られるほど過激なものが、まさか実存していたとはその時まで半ば信じていなかったあたしは、衝撃をそのまま口にした。