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貴女に溺れて彷徨う
第3章 不自由への憧憬
みなぎをシャワーに行かせたあたしは、玩具の他にも用意していた物をテーブルに置いて、耳を澄ました。海底のように広い部屋、惜しくも彼女が身体を流している水音は拾えなかった。
「お帰り」
戻ってくると、みなぎはさっぱりとした顔に戻っていた。
「プレゼント」
「え?」
「化粧水に美容液にプライマー。とか、下地にパウダーにコンシーラーに、フレグランススプレー。お揃いにしたくて」
Tenue de bonheurとは無関係のショッパーにそれらを潜ませていたあたしは、包装を解いて目を見開くみなぎに続ける。
「パートナー、口煩いんでしょ。でもみなぎだってお洒落盛りなんだし、これくらいならバレないかなって。ネイルリムーバーも使って。期間限定のラズベリーの香りで、癒されるよー」
「でも、悪い……」
「ううん。みなぎがもっと可愛くなってくれる方が嬉しい。それに下地とか、今は良くても、成分考えて選ばないと、将来後悔することになるよ……多分」
「多分……?」
「みなぎは、永遠のお姫様かも知れない」
立ち上がり、あたしは素顔のみなぎの頬を両手に挟む。
洗い立ての顔は、もっちりと指に吸いついてくるようだ。
「何もしなくても綺麗だし。でも化粧は娯楽だし。無意味でも、やること自体が楽しいって、あたしは思っていたいんだ」
「…………」
あゆみを迎えに行くまでに、朝と同じ化粧に戻しておく必要がある。
あたしはソファの端に寄って、隣にみなぎを促した。