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一度くらい夢を見たら
第2章 すごい偶然
「ええ、好きですよ。
もちろん、酒も。
どっちもイケるんですよ。あなたは?」
「あ・・私もです。甘いものには目がないの。
でもお酒も大好き。
ビール党です、私は」
鼻にしわを寄せ、媚びた笑みを浮かべながら
嬉しそうに答えてしまったが、
すぐに表情を戻して身構えた。
「あの・・いまさらなんですけど、あなた
本当にあの小説の作家なんですかぁ?」
斜めに視線を送りながら、口元を引き締める。
男はすでに美奈枝の考えていることを
見通していたので、
慌てたり動作を大きくすることなく、ゆったりと口を開いた。
「ええ、本当です。
イケない人妻を書いたのはオレ、
蛍慎之介です」
「でも名前だけじゃあ本物かどうか
わからないじゃない。
何か証拠はないの?証拠は」
「あります」
すました顔で答えた。
美奈枝にむかって頭をかしげてニヤッと微笑む。
次にトートバッグの中をかき回し
なにかを取り出した。
それはあの月刊官能。
今売っているものとは違う、古いもののように見える。
ページの端が小さく折れ全体的にシワシワだった。
その月刊官能をテーブルの上に置き、
美奈枝の前に押しやった。
よく見るとタイトルの上に
2010年9月号、と書いてある。
4年前のものだ。
手に取ってから男に目をやると、
「折ってあるページがあるでしょう?
そこを開いてみてください」
そう言われて、角を大きく折ってあるページを開いてみると、
大きな文字と履歴書に貼るくらいの大きさの写真が目に入った。
第18回 官能小説新人賞・決定
受賞作品「喘ぎ声」 蛍 慎之介
ページの半分くらいを使ってその2行が書いてあり、
その横には作者の顔写真がある。
雑誌に顔を近づけて
食い入るようにその顔を見る。
そして目の前に座る男の顔を見る。
写真、男、写真、男・・
あ!同じ顔!
写真の顔は緊張からか表情が少し硬いが、
今自分の目の前に座っている男であることは
間違いないとわかった。
証拠は見事にその役割を果たしたのである。
もちろん、酒も。
どっちもイケるんですよ。あなたは?」
「あ・・私もです。甘いものには目がないの。
でもお酒も大好き。
ビール党です、私は」
鼻にしわを寄せ、媚びた笑みを浮かべながら
嬉しそうに答えてしまったが、
すぐに表情を戻して身構えた。
「あの・・いまさらなんですけど、あなた
本当にあの小説の作家なんですかぁ?」
斜めに視線を送りながら、口元を引き締める。
男はすでに美奈枝の考えていることを
見通していたので、
慌てたり動作を大きくすることなく、ゆったりと口を開いた。
「ええ、本当です。
イケない人妻を書いたのはオレ、
蛍慎之介です」
「でも名前だけじゃあ本物かどうか
わからないじゃない。
何か証拠はないの?証拠は」
「あります」
すました顔で答えた。
美奈枝にむかって頭をかしげてニヤッと微笑む。
次にトートバッグの中をかき回し
なにかを取り出した。
それはあの月刊官能。
今売っているものとは違う、古いもののように見える。
ページの端が小さく折れ全体的にシワシワだった。
その月刊官能をテーブルの上に置き、
美奈枝の前に押しやった。
よく見るとタイトルの上に
2010年9月号、と書いてある。
4年前のものだ。
手に取ってから男に目をやると、
「折ってあるページがあるでしょう?
そこを開いてみてください」
そう言われて、角を大きく折ってあるページを開いてみると、
大きな文字と履歴書に貼るくらいの大きさの写真が目に入った。
第18回 官能小説新人賞・決定
受賞作品「喘ぎ声」 蛍 慎之介
ページの半分くらいを使ってその2行が書いてあり、
その横には作者の顔写真がある。
雑誌に顔を近づけて
食い入るようにその顔を見る。
そして目の前に座る男の顔を見る。
写真、男、写真、男・・
あ!同じ顔!
写真の顔は緊張からか表情が少し硬いが、
今自分の目の前に座っている男であることは
間違いないとわかった。
証拠は見事にその役割を果たしたのである。