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一度くらい夢を見たら
第2章 すごい偶然
「どうです?納得してもらえましたか?」
雑誌を閉じ、蛍慎之介に返そうとした時、
店員がケーキを持ってきた。
なぜだか頬を熱くしながら雑誌をひっこめる。
若い女の店員に雑誌のタイトルを見られたかも、
そう思っただけなのにほてりを感じた。
ケーキを置いてからいったんカウンターに戻った店員が
再びやって来て、
今度は香り立つコーヒーをテーブルにならべ、
伝票を置くと一礼して戻っていった。
改めて慎之介に雑誌を返すと、
疑ったことを詫びる気持ちを込めて
美奈枝はちょこんと頭を下げた。
受け取った慎之介はバッグの中に雑誌を放り込むと
さっそくフォークを手にしてケーキに突き刺す。
疑われたことに気分を害してはいないようだ。
眼が笑っている。
その様子を見ながら
美奈枝はまずコーヒーをすすった。
「お!おいしいですよ、このチーズケーキ、
濃厚で。さあ、あなたも食べてください」
「あ、では・・いただきます」
普段よりは小さめにフォークにすくい口に入れる。
慎之介の言うように、
まとわりつくようなチーズの濃厚さが美味しかった。
おいしいです、と2口目をほおばってから、
フォークを置き美奈枝は姿勢を正した。
「あの、すみませんでした、疑ったりして」
「いいんですよ、普通です、疑う方が」
あっさりとした物言いに、
もしかしたら同じような事をたびたび
経験しているのではないかと思った。
聞いてみるとその通りだった。