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一度くらい夢を見たら
第3章 巧みな言葉

「あなたはなぜ、月刊官能を手に取ったんですか?

 他の官能小説雑誌じゃなく、なぜ

 官能だったんですか?」


「それは・・写真が豊富だからかな・・」


「写真って、ヌードの?

 女性でも見たくなるんですか?」


「え?あ、ええ・・」


「小説はどうです?」


「立ち読みばかりだから、全部をきちんと読んだことは

 ないんです。それに・・このての小説の良し悪しって、

 正直わからないわ・・

 役に立たない答えですみません・・」


「いえ、そんなこと気にしなくていいんですよ。

 それじゃあ・・本題に入りますね」


「はい・・」


「あなたはなぜ、官能小説に興味があるのですか?

 読んでみようと思うのですか?」


「それは・・」



美奈枝はテーブルの周りをおどおどとした目で見回し

近くに人がいないことを確認する。



「・・うらやましくて・・」


「え?なんですって?」



美奈枝の声が小さくて聞き取れなかったのか

慎之介は声を響かせて聞き返す。


あまりにも普通の会話のような声のボリュームに、

美奈枝は思わず下を向いた。



「すみません、小さな声じゃないと

 答えられないですよね」



慎之介は身を乗り出し、

2人の距離を縮めた。

美奈枝は慎之介の耳に少し顔を近づける。



「作り話でも・・うらやましいんです。実は

 ・・うちは夫婦生活がすごく少なくて・・」



小さな声であっても、なんてこと言っちゃったんだろう・・!

いくら作家のインタビューだって言ったって、

こんな恥ずかしい事を・・


だんだんと美奈枝は後悔し始めた。

やっぱりやめておけばよかった・・

これ以上聞かれたら逆に

もっとベラベラしゃべっちゃいそう・・


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