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一度くらい夢を見たら
第3章 巧みな言葉

「そうなの!まだ40半ばでしょう、なのに

 そんなにできなくなっちゃうもんなのかしら?

 友達のご主人なんか10歳も年上なのに

 けっこうがんばってるみたいなのよねぇ。

 その友達、自慢げに言うのよ、夫の体内年齢は

 実年齢よりマイナス20歳だと思うわ、だって!」




徐々にヒートアップしてくると喉も乾いてくる。

グラスのビールを一気に飲み干すと、

それを見てうれしそうに目じりを下げた慎之介が

ビールを注ぎ足す。

美奈枝は気をよくしてまたしゃべりだす。



「あたしはね、もっと主人に愛されたいのよ。

 更年期に突入して触られるのも嫌っていう

 友達も結構いるけど・・

 あたしはまだまだ、

 男に体を開きたいわぁ」



甘ったるいしゃべり方の語尾が余韻を残す。

慎之介は息とともに笑いを漏らしている。



「え~!おかしいですかぁ?」


「いや、ずいぶんはっきり言うなぁと思って。

 でもほんとはみんなそう思ってるんですよ。

 ただ正直に言わないだけ、なんだよね」



ペンを手帳の上にポンと放り投げる。

自分のグラスにもビールを注ぎ足してから

美奈枝のグラスにも注ぎ足した。



「だってさ、男と女なんて

 相手に対する気持ちのまず初めは

 セックスできるかどうかってところから入ると思うんだよね。

 この男とできる?生理的にむりかしら、とか

 抱かれてみたいわぁとか。男はもっとだよ。

 この女、どんな体してるかなとか、

 喘ぎ声聞きたいぜ、とかさ。

 好意を持つってことはやりたいってこと、

 オレはそう思うんだ」




美奈枝をまっすぐ見つめる慎之介の眼。

これがまたちっともイヤラシさだとか

危険さだとかを感じさせない。

男の主張を堂々と演説し、

聴衆から賛同の拍手をもらいたい。

それくらいにしか思えない眼だ。





 




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