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一度くらい夢を見たら
第4章 夢の結末・・
たった一度の火遊び・・


平凡な中年主婦にとっては

一生モノの刺激・・

それを手に入れられただけで満足できた。




蛍慎之介は、名前も連絡先も、

何も聞いてはこなかった。


この関係を継続していこうとは

思っていないからだろう。


その代わりに、

もしもまたあの本屋であなたと再会できたら

今度はそれを運命と呼ぼう、と

詩的な言葉をくれた。



運命のような再会を

はたしてみたい気持ちも少しはあるが、

無い方がいいのはわかっている。

深みにハマって今現実に手にしている

ささやかな幸せを、

壊してまで続けることではないと、

それくらいのことはわかっている。



それでももしかしたら、を期待して

あの本屋には時々足を運ぼう。


広々とした通路のむこうの棚の陰から

慎之介が顔をのぞかせたら・・

そう夢を見るだけで、女心はおだやかに揺れる。

思い出すと自然と口元がほほ笑む。


これからは、

作家・蛍慎之介の紡ぎだす妄想の言葉に濡らされよう・・

それがいちばん簡単で

無難な夢の見方だと言えるだろう・・


火遊びは所詮火遊び。

一度で終わるところに意味があるのかもしれないと、

美奈枝はなんとなくわかった気がした。
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