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琥珀色に染まるとき
第2章 噂のバー店主

 一杯目に提供したのは、マスカットリキュールにソーダとライムを加えたロングカクテル。マスカットのみずみずしい爽やかな香りに、ライムのすっきりした酸味がかけ合わさった一杯だ。
 美しい緑色をしたリキュールボトルの上品なデザインが乙女心をくすぐったらしく、女は景仁の許可を得たうえで、カウンターに置かれたボトルとカクテルを写真に収めた。

 桃が好きだと聞き、二杯目にはベリーニを勧めた。この時期から旬を迎える桃を使った、女性に人気のカクテルだ。
 差し出されたフルート型シャンパングラスを見るなり、女は目を輝かせた。グラスを満たすピンク色の液体に反応し、しきりに“可愛い”と言って喜ぶ。あらゆるものをそう表現するのは、若い女特有の性質だろうか。

 一口飲むと、女は満面の笑みを浮かべた。

「美味しい!」

 景仁が柔らかな微笑みを返せば、頬を染めてわずかに俯く。

「……ワインベースって聞いて少しだけ不安だったけど、これ、好きです」
「それはよかった。果汁が加わることでアルコール度数も低くなりますし、桃のとろりとした甘さで飲みやすくなるんですよ」
「うんうん。本当に美味しいです」

 口元をゆるめてグラスを傾ける女を温かく見守りながら、景仁は次の展開を考える。これが締めの一杯ならいいが、問題は次なのだ。顔色や口調の変化で女がすでに酔い始めているのはあきらかだが、おそらくまだ飲むつもりだろう。
 案の定、ベリーニを飲み干した女は言った。ショートカクテルを飲んでみたい――と。

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