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琥珀色に染まるとき
第2章 噂のバー店主

女が一人、こんな時間に歓楽街の一角で無防備に酔っ払うのはよろしくない。
アルコールを少なめにして出すか、ノンアルコールを勧めるか、あるいはさりげなく帰宅を促すか……。客のペースをコントロールするのも、バーテンダーの仕事だ。
結局、ハーブ系リキュールのドランブイとオレンジジュースをシェイクしたものを出した。アルコール度数は十度くらいに抑えられる。
ドランブイは、スコッチウイスキーをベースに蜂蜜やハーブが配合された甘いリキュールで、これを使った有名なカクテルに“ラスティネイル”がある。飲みやすいがアルコール度数が高いので、今回はやめておいた。
シェイカーからカクテルグラスに注がれていく、オレンジ色に輝く液体。それを見つめる女の瞳が、とろりと揺れる。嫌な予感がした。
残念ながらその予感は的中したようで、グラスの中身は早いペースで減っていく。いよいよ残りわずかとなったとき、不意に女が首をかしげ、こちらを覗きこむ仕草をみせた。
「あ、マスターの瞳、とっても綺麗な色ですね」
「おかしな色でしょう?」
「いいえ、素敵です! 透きとおっていて、吸いこまれちゃいそうなくらい」
「あなたのような可愛らしい女性にそう言っていただけると光栄です」
答えながら、やはりそれが目当てだったか、と景仁はうんざりした。幾度となく経験してきた展開に思わず苦笑しそうになるが、顔に出すわけにはいかない。
優しく微笑んでやると、アルコールのせいで赤く染まった女の頬はさらに色を増した。その表情にはあどけなさが見え隠れする。

