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琥珀色に染まるとき
第10章 マホガニー色の幻

 西嶋が次々に取り出したのは、ワイルドターキー八年、響十七年。それぞれをオン・ザ・ロックで提供した。
 そこで彼は、ごゆっくり、と言い残すと他の客のほうへ移動した。何杯目かの酒を飲み終わった者が会計を頼んでいる。

「ね、涼子さんはなに飲んでるの?」

 弾んだ声に左側を向くと、人懐こい笑みがあった。

「ボウモアよ。響くんは、響ね」
「そ。俺のウイスキー」
「ふふ、素敵ね」
「でしょ」

 満足げにグラスを傾ける、おそらく年下の男。初対面だが、どことなく見覚えがある気もするし、いきなり名前を呼ばれても悪い気はしなかった。不快感を与えず、すんなりと相手の懐に入りこむ器用さが彼にはあるようだ。

「さすがはナンバーワン。女性の心を掴むのがお得意で」

 今度は右から聞こえる渋い声。タツの言葉にあらためて響の姿を観察すると、明るい髪色に高級ブランドのモード系スーツという格好……。

「あなた、佐伯さんが言ってた、ホストの――」

 その名を口にしかけた瞬間、長い人差し指が唇に伸びてきた。触れる寸前で止められたそれを響は自身の口元に持っていき、内緒ね、と甘く囁いた。

「内緒って……そのナリで言うことか」

 その呆れ声に振り向けば、いつの間にか戻ってきていた西嶋が苦笑している。タツがふっと小さく噴き出した。

「おいおい、そんなに急いで戻ってこなくても大丈夫だよ。響が悪さをしないように私がしっかり見張っているから」
「響はそんなことしませんよ。心配なのはタツさんのほうです」
「あら、バレたか」
「冗談でもやめてくださいね」

 西嶋は困ったように笑った。しかし、その穏やかな顔になんとなく、鋭い光が宿っているように見えるのは気のせいだろうか。

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