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琥珀色に染まるとき
第2章 噂のバー店主

なんとなく予想はしていたものの、見るからに純真そうな、まるで成人を迎えたばかりのように初々しい女が、三十も半ばを過ぎた夜の世界の住人に抱かれるためにここまで来たとは思いたくなかった。
人は見かけによらない――さきほど否定したばかりのことわざは、どうやらやはり正しいようだ。
こうして酔いに任せて誘われるのはいつものことだが、女がそれを望むなら仕方あるまい。一度限りの関係でもいい――そう言うのなら、それを叶えてやるだけだ。一度抱いてそれ以上の関係を求められたとしても、あいにくその期待に応えられる器は持ち合わせていない。
そんな心情など知る由もない女は、上目遣いでしきりに反応を窺ってくる。そうしてついに、核心に触れようと意を決した様子で口を開いた。
「噂、聞きました。でも私、そんなの気にしません。だから、もしよかったら……」
そのとき、若い男の声がそれを遮った。
「ねえ。こんなオジサンやめて俺にしない?」
店奥の壁際の席で、黙ってグラスを傾けていたその若者。真ん中あたりの席にいる女の隣にさっと移動したかと思えば、甘ったるい笑みを浮かべてその顔を覗きこむ。目にかかるさらさらとしたブロンドの髪をかき上げながら、いたずらっぽく微笑んだ。
柔らかな茶色の瞳に至近距離で見つめられた女は、戸惑いを隠せていない。開けた口を閉じるのを忘れている。
「俺とマスター、どっちと添い寝したいの」
「そっ、添い寝……」
「さっきマスターを誘おうとしてたでしょ。よかったら私と、って」
さらに顔を近づけて迫る男に、女の赤らんだ顔からは今にも火が出そうだ。さすがに“添い寝”の意味をそのまま捉えているわけではなかろう。

