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琥珀色に染まるとき
第10章 マホガニー色の幻

 タツがグラスを鳴らした。

「まあ世間は狭いから、涼子さんも気をつけることだな。このあたりに出入りしていると、関わりたくない輩とも関わなきゃならんときがあるから」
「タツさんが関わりたくないのは、今でもこの店に出入りしてる元妻でしょ」
「クソガキは黙っていなさい」

 タツの放った一言に苦笑した響は、ウイスキーを呷ると気を取り直したように語り始めた。

「しかし、晴れてマスターの潔白が証明されてよかったよ。変な噂が流れてて心配してたんだよね」
「噂……」
「あ、涼子さん知らなかった?」
「そうね。詳しくは、ないかな」

 前方からの視線が気になり、わざとらしく左に身体をひねってしまう。西嶋の顔を見る勇気がない。

「店の名前の噂は知ってる?」
「いいえ」
「じゃあ、clayの意味は?」
「泥とか、粘土……」
「そ。マスターの目を見たら泥沼に引きずり込まれるくらい夢中になるって言われてたの。店の名前はそういう意味で、クレイ。おもしろい噂だよね」

 そういえば、佐伯も同じようなことを口にしていた。このあたりでは有名な噂なのかもしれない。

「女の子たちが勝手に流す噂って怖いよね。俺も最近までは限りなく黒に近いグレーだと疑っちゃってさ」
「……おいおい、クソガキ」

 タツが割りこんできた。

「黙って聞いてりゃ……しゃべりすぎなんだよ、お前は。これ以上涼子さんを困らせるんじゃない」
「だから結局のところ潔白でよかったねって話じゃん」
「知らなくていいことまで明かしてどうする。二人が付き合う前の話だろう」
「そりゃたしかに過去のことだけど、あとから知るよりよくない? 俺は知りたいけどな」
「すべて知れば相手を理解できると思っているなら、それは立派なうぬぼれだ。相手の情報をすべて手に入れたからといって、信頼関係が成り立つわけじゃない。逆効果の場合だってある。大事なものを失うぞ」

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