この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
琥珀色に染まるとき
第10章 マホガニー色の幻

 それから、まばらに客が出入りする中、両隣の色男たちが繰り広げる愉しげな会話を聞いたり、無意味に口説かれたりしながら時間を過ごした。深夜三時になると、彼らは店を去っていった。

「先に帰るか?」

 二人きりになった静かな店内に、心地よい低音が響く。

「でも閉店まであと二時間だし、待っていてもいい?」
「ああ。お前が嫌じゃなければ、実はそうしてほしいと思ってた」

 そう言って口角を上げる西嶋を、涼子は愛おしく思った。今すぐにカウンターを飛び越えて抱きつきたい衝動に駆られたが、手元で官能的に煌めく琥珀色を眺めてやり過ごす。

「悪かったな。嫌な思いをさせて」
「え?」

 視線を上げれば、そこには湿っぽい微笑があった。

「噂のこと?」
「…………」
「正直、全然気にしていないと言ったら嘘になるけど」

 そこまで言って西嶋の反応を窺うと、彼は哀しげに眉を寄せた。この男を安心させてやりたい、と涼子は無性に思った。

「でもいいのよ。大事なのは、自分の目で見て感じたことだから。少なくとも私が感じるのは、あなたはこのお店が好きで、お客さんが好きで、こんな私に優しくしてくれる、素敵な男性。……だから、いいの」
「涼子……」

 西嶋は安堵の息を一つ吐くと、柔らかな笑みを見せた。

「もう店閉めて帰ろうか」
「だめよ。あと少しだから、ちゃんと仕事して」
「ははは。わかってるよ」

 その崩れた笑顔がたまらなく愛おしい。

 店内に流れるピアノジャズが心地よい眠気を誘う中、再びぽつりぽつりと現れ始めた客の話し声、西嶋の上品な笑い声、彼がなにか作業するときに発するかすかな音を、右耳から静かに受け入れた。

/429ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ