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琥珀色に染まるとき
第10章 マホガニー色の幻

 グラスを持ったまま、西嶋に促されて窓の外に出た。生温く湿った空気が頬をかすめる。雨は降っていなかったが、案の定、星は見えなかった。当然だ、もう朝なのだから。二人でくすりと笑みをこぼし、すっかり明るくなった空を眺める。

――turn to Clay

 涼子はふと、さきほど西嶋が言っていた店名の由来を思い出した。

「聞いてもいい?」
「ん?」
「西嶋さんがバーテンダーになろうと思ったきっかけ」

 こちらを見下ろした彼は優しい笑みを浮かべる。

「ほんの些細なことさ」
「聞きたいわ」

 西嶋はウイスキーを一口飲むと、語り始めた。

「大学二年の冬だったかな。都内の別の大学に通っていた藤堂と、近況報告もかねて飲みにいったんだ。もちろん、洒落た店なんかじゃなく大衆居酒屋に」
「ふうん。二人も普通の大学生だったのね」
「そりゃどういう意味だ」
「ふふ。それで?」

 促せば、彼はふっと口角を上げる。

「藤堂が、ウイスキーを飲みたいから二軒目はバーに行こうと言い出したんだ」
「……ずいぶん大人びた大学生ね」

 思わず感嘆の声を漏らすと、苦笑が返された。

「いや、ウイスキーを飲んだのも、バーに行くのだって、二人ともその日が初めてだった」
「そう。緊張した?」

 好奇心で尋ねてみると鼻で笑われたが、その表情からは肯定の意思が見てとれる。

「それでたまたま入ったのが、ある人がオーナーバーテンダーを務めるオーセンティックバーだった。俺たちはカウンターでかなり浮いていたと思うよ」

 慣れないカウンター席に座る若者二人の、こわばった背中が目に浮かぶ。

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