この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
琥珀色に染まるとき
第11章 BETWEEN THE SHEETS

 景仁は、ルームウェアを着るとキッチンへ向かった。あくびをしつつ、のんびりとコーヒーを淹れる。
 物音がして振り向くと、黒いスリップを身にまとった女が、けだるげな仕草で髪をかき上げる後ろ姿が目に入った。カーテンの隙間から差しこむ淡い光が、薄暗い部屋に立つ美しい女体に艶めかしい影を作る。

「お前も飲むか?」

 手にしたマグカップを胸の高さまで上げてみせると、彼女は穏やかな表情で頷いた。

「着替えてくるわね」
「いや、いい」
「え」
「そのままベッドで待っていてくれ」

 言いながら、もう一つのカップにサーバーからコーヒーを注ぐ。涼子は不思議そうにこちらを見つめていたが、観念したようで寝室に戻っていった。
 そのあとを追い、ベッドサイドに歩み寄る。彼女にカップを一つ手渡してベッドに上がり、並んでヘッドボードに寄りかかった。

 芳醇な香りが二人の間をゆったりと流れる。同時に一口飲み、ほっと息をついたところで、不意に彼女が呟いた。

「なんだか贅沢」
「ん?」
「ベッドでコーヒーなんて」
「そう?」
「そんな習慣、昔からなかったもの」
「まあ普通の家庭はしないか」
「うん。そんなことしたらきっと叱られたわ」

 その苦笑混じりの固い声には、ただならぬ緊張感が漂う。今まで隠していたなにかを、涼子は自分に打ち明けようとしている。景仁はそう確信し、黙って次の言葉を待った。

「私の父は、わりと考えが古くて厳しい人だから」

 コーヒーをまた一口飲んで、彼女は続ける。

「今の仕事に就いてからはほとんど会ってないの。忙しいっていうのもあるけど、それ以前に、もう接し方を忘れちゃったのね。お互いに」

 その落ち着いた声は、強がりを孕んではいない。だが薄く笑んだその横顔には、いっさいの音を遮断する閉所に身をひそめるように、なにかを諦めてしまったような孤独な静けさがある。

/429ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ