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琥珀色に染まるとき
第13章 忘却の片時雨

 冷凍庫からドライジン、冷蔵庫からドライベルモットを取り出し、カクテルグラスに氷を詰めておく。ミキシンググラスに入れた氷と水をステアしているとき、急に話しかけられた。

「お前、彼女が来るのを待っているのか」
「……誰のことだ」

 ストレーナーをミキシンググラスに被せ、水だけを捨てる。氷入りのカクテルグラスを同じくステアして冷やし、氷を捨てる。

「とぼけるなよ」
「別にとぼけてなんかいないさ」

 角の取れた氷のみになったミキシンググラスをもう一度水切りすると、そこにジンとベルモットを目分量で静かに注ぎ、氷の組み方を保持したままステアする。
 手先の感覚で液体の重厚なとろみを感じ、香りがはっきりと立ったところで切り上げる。

「お前のそんな顔を見るのは久しぶりだぞ。うまくごまかしているつもりだろうが、無駄だ」

 愉しげに言った藤堂は、口の端をつり上げて煙草を吸う。

「そんなに嬉しいか……」

 苦笑混じりに返しながら、ミキシンググラスにストレーナーを被せ、カクテルグラスに透明な液体を注ぎ入れる。カクテルピンを刺したオリーブを沈め、最後にレモンピールを軽く絞って香りづける。

 差し出されたマティーニに気づいた藤堂は、吸いかけの煙草を灰皿で揉み消した。グラスを手にして一口飲むと、口元に笑みを浮かべる。美味い――そういう意味だろう。見慣れたその仕草に、景仁も口角を上げた。

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