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琥珀色に染まるとき
第13章 忘却の片時雨

「で、さっきの答えを聞かせてもらおうか」
「は?」
「は、じゃないだろう。質問の答えだよ」
「ああ……」

 急な話題の巻き戻しについていけずに気の抜けた返事をすると、あからさまにうんざりした顔をされた。毎度のことながら、こうなると厄介だ。

「言わなきゃわからないのか? 東雲涼子が来るのを待っているのかってことだよ」
「さあな。どうだろう」

 呆れる藤堂をよそに、考えこむそぶりをしてみせる。いつもどおり話をそらしてやり過ごそうと決めこみ、カウンターから背を向けた。

「そんな顔ばかりしてると理香さんに怒られるぞ、堅物」
「ふざけている場合じゃない。お前が一人の女に夢中になれないおかげで、いよいよ俺にも変な噂が立ち始めたらしい」

 案の定、非難の声を背中で受け止める羽目になった。バックバーからバランタイン十七年を選び取りながら、くくっ、と喉を鳴らして笑う。

「ただの噂なんだから放っておけよ。それに、真実を明かしたところで誰も興味なんかないさ」
「たしかにな。泥沼のようにハマるなんて噂が流れているわりには、一度限りの条件におとなしく従う女がいるくらいだから。正直、お前と寝られるなら噂の真偽なんてどうでもいいんだろう」

 その皮肉に思わず振り返ると、藤堂が不敵な笑みを浮かべてグラスを傾けていた。

「はっ……口が悪いな。お前の本性を知っていながら、理香さんがなぜお前を引き抜いたのか心底疑問だよ」
「そういうところを気に入っているらしい。変わった女だよ」

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