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琥珀色に染まるとき
第13章 忘却の片時雨

 冷静を装って言い捨てると、なんだか無性に虚しくなった。
 偽りとも、真実とも思っていない――そのほうが正しいかもしれない。勝手に広まる噂の真偽も、自分の心の真偽さえ、とうの昔に放棄してしまっている。

「本当にそうか? 不埒を気取ってなにを考えているかわからないふりをしているだけだろう。そろそろ正直になったらどうだ。これ以上自分に嘘をつくな」
「嘘って……」

 得意の正論で反論してきた堅物に返せる言葉は、もう見つからない。

「社長の出張警護を彼女が担当したことはもちろん偶然だが、お前と彼女の出会いも、お前の身に起こっている変化も、必然なんだよ。自覚しろ」

 藤堂はそう言うと、カクテルピンを押さえながらマティーニを煽り、最後に口に入れたオリーブを噛みながら残りを流しこんだ。

「なんだそれ……」

 からになったグラスを下げながら、景仁はため息混じりに呟いた。偶然だの必然だのクサイ言葉に呆れたのと、図星をつかれたのとで、すっかり反論する気が失せたのだ。
 言われなくとも、自分の身に起きている変化のことはとっくに自覚している。ただ気づかないふりをしていただけだ。

 丸氷を落としたロックグラスに、用意しておいたバランタインを注いでステアする。それを無言で差し出したが、藤堂を黙らせることはできなかった。

「明美のことがあってから、東雲さんの様子はどうだ」
「変わらないよ。……たぶん」
「たぶん?」
「ああ」
「ふむ。お前なら彼女の本音を引き出せると踏んでいたんだが」
「買いかぶりすぎだよ。俺はただそばにいただけだ。あのときは、結局なにも気づいてやれずに、涼子を……」

 そこまで言って目を閉じ、深く息を吐き出す。ここで弱音を吐けば、自分自身が情けなくなるだけだ。

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