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琥珀色に染まるとき
第13章 忘却の片時雨

 そのまま暗い視界の中で黙っていると、不安げな涼子の顔が再生された。それは快感に喘ぐ艶めかしい表情に変わり、やがて柔らかい笑顔に変わった――。
 あの日その笑顔を見たとき、この女をもっと知りたいと思った。彼女が自分にそう言ってくれたように、自分も彼女のすべてを見てみたいと。

「らしくないな」

 一言吐いた藤堂は、ウイスキーを飲もうとグラスを唇につけかけ――直後、その表情を歪め、疑念のまなざしをよこした。

「まさかとは思うがお前、もう逃げられたのか?」
「そうじゃない、と言えば嘘になる」

 真顔で答えると、鼻で笑われた。

「予約なしでお前とヤったうえに逃げるとは、たいした女だ」

 その不躾で品格のかけらもない言葉は、とても社長秘書のそれとは思えない。

「……予約ってなんだよ」
「お前のファンはそう言っているみたいだぞ。ここに来て予約を取りつけることに成功すれば、お前の瞳を数時間だけ独り占めできるとか」
「まるでゲームだな」
「事実そうだろう。お前もわかっていたはずだ。後腐れのない女としか関係を持たないのがなによりの証拠じゃないか」

 鋭く光る瞳を一瞥し、カウンターのふちに手をつく。視線を自分の指に残したまま、景仁は静かに呟いた。

「そんなもん、もうとっくにやめたよ……」

 一瞬の沈黙のあと、噴き出す声が聞こえた。反射的に顔を上げると、藤堂がこらえるように肩を震わせていた。

「なにを笑ってる」
「いや、もうお前は誰にも本気になれないんじゃないかと思っていたが、お前がみんなのマスターでなくなるのも時間の問題かな」
「…………」
「西嶋。もういいんじゃないか?」
「なにが」

 そう聞き返したものの、藤堂の言わんとしていることは想像がつく。

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