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琥珀色に染まるとき
第14章 MY FOOLISH HEART

 西嶋と直接話したことのない城戸に、その存在が確実に“男”であることを勘づかれてしまった。知らぬ間に色めいた空気を周囲に撒き散らしていたのだろうかと恥ずかしくなり、涼子は唇を噛みしめた。
 城戸に気づかれないよう、左手でシャツのボタンがしっかり閉じられていることを確認する。無性にそうしなければならない気がした。心に湧いたその感情は、城戸への警戒心から来るものだ。それは、彼を男として認識しかけている証拠でもある。

 城戸から寄せられる、かすかな好意には気づいていた。城戸が涼子の頭痛の原因を知っていたのと同じように、涼子もいつの頃からか彼の気持ちを悟るようになっていた。
 だからこそ、知らないふりをした。理由は一つ、その気持ちに応えることができないからだ。男として見ることはできないが、信頼し、尊敬し合える同僚としての城戸は失いたくない。相棒としてともに働いていく以上、それだけは譲れなかった。

「…………」

 ふと、あの人の長い指にボタンを器用に外されていく感覚がよみがえった。とたんに切なくなり、シャツを握る手に少しだけ力を込める。

 西嶋のことを思い出すだけで、こんなにも女になってしまう。触れることなく快感を呼び起こされた身体は、悦びに疼き始め、自らの手には負えなくなる。なだめられるのは、あの男しかいない。
 そんな無様な姿をこれ以上城戸に晒したくない。これ以上、女として意識されたくない。城戸がどんな気持ちでいるのか、そして自分自身がどんな顔をしているのか、想像するのも嫌だった。

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