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琥珀色に染まるとき
第14章 MY FOOLISH HEART

「ずっと待ってたのか。こんな格好で」

 目の前で揺れるヘーゼルの瞳。腕を掴む大きな手から、切ない熱が伝わってくる。

 こんな格好、とはなんだろう。見下ろしてみると、Vネックの胸元から谷間が少しだけ見えていた。
 優しく微笑んでもらえるどころか、心配されてしまったようだ。なにも羽織らず外に出たことを、涼子は後悔した。

「だ、大丈夫。寒くないから」
「そういうことじゃない……」

 ため息混じりの声に反省心をかき立てられた瞬間、温かい腕の中に閉じこめられた。彼から漂う柔らかな空気に包まれ、自然と身体の力が抜けていく。
 その胸に顔をうずめて安堵の息を吐くと、思いのほか艶っぽくなった。恥ずかしさを隠すため、彼の広い背中に腕を回し、それきりしばらく言葉を交わさずに抱き合った。

「まったく……危なっかしいな、お前は」

 不意に耳元で囁かれ、露出した耳を唇でやわく撫でられた。背中からうなじへ上った彼の手が、首筋と鎖骨をなぞる。髪をまとめ上げていることを強調するようなその行為にぞくりとし、とっさに見上げれば、苦笑を浮かべる彼と目が合った。
 こんなふうに一人の女として扱われることで、ボディーガードではなく、ただの女になってしまう。

「ごめんなさい。……早く、会いたくて」

 ようやく出た素直な言葉に、彼はふわりと口角を上げた。それは、今までで一番優しい笑み。そう、見たかったのはこの笑顔だ。

「あの……」

 どう部屋に誘うのが自然なのか、それとも彼はすぐ帰るつもりだろうかと思い悩み、言いよどむ。そんな気持ちを察したのか、彼は愉しげに笑った。

「上がっていい?」
「……はい」

 やはりこの男には敵わないと感じながら、涼子は吐息のような返事をした。

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