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琥珀色に染まるとき
第14章 MY FOOLISH HEART

 雨の気配を背に感じながら、二人寄り添うようにして部屋の扉の前に立つ。鍵を開ける手が震えるのは、秋の夜風のせいではない。
 彼の視線に身体を押されるようにして、先に玄関に入る。扉が閉まる音と同時に肩を掴まれ、強引に振り向かされると、きつく抱きしめられた。

「涼子……」

 鼓膜を撫でる、甘やかな低音。
 必死に自身を抑えるようなそのかすれ声に、涼子がどれだけ心を揺さぶられているかなど、きっと彼は知らないのだろう。この声に、電話でなくこうして近くで名を呼ばれたかったのだと、心が悦びに震える。

 涼子は、すがりつくように西嶋の首に腕を回した。そこから先は、もう言葉はいらなかった――。

「……っ」

 熱い唇が重なる。すべての想いをぶつけるような、深く激しいキスが降る。息ができないほどの口づけは、小さな喘ぎさえ漏らすことを許さない。

「んっ、んん……」

 背の高い彼に強く身体を引き寄せられるせいで、かかとが浮いてしまい、パンプスのヒールがかたかたと音を立てた。
 その力強い腕と、しなやかに、それでいて荒々しく口内を味わう熱い舌に意識を持っていかれそうになる。たくましい身体にしがみつき、貪るようなキスに必死についていくしかない。

「は……ぁ……」

 甘ったるく湿った空気が、玄関に充満していく。
 腰を抱いていた彼の手が、ニットの中に侵入してきた。インナーをめくり上げて背中を這う熱い手のひらに、ぞわりと快感が走る。
 たまらず小さな喘ぎ声をあげると、濡れた二つの唇が少しだけ離れた。その隙間から漏れる荒い吐息が、甘美な香りとなって空間を支配する。

 本能的に彼のジャケットの中に手を忍ばせ、シャツ越しに、胸板から腹筋を確かめるように撫でる。
 もっと満たしてほしい。もっと――。艶やかな視線を送りながら、涼子は誘った。

「来て……」

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