この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
琥珀色に染まるとき
第3章 出会いは静かな夜に

 佐伯の行きつけというこの店の入り口は、都会の喧騒から逃れられる隠れ家と呼ぶにふさわしい雰囲気を醸し出している。さぞ高級なホテルバーに行くのかと思っていたので驚いたが、賑やかで華やかなところから少し離れたこの場所は、自然と心を落ち着かせてくれる。

 外で飲む機会はあまりないが、涼子は酒が好きだ。休日に時間が取れれば一人で飲みにいくこともあるし、自宅でもよく飲むほうだと思う。
 決して現実逃避のためでも、意図的に気分を高揚させて自らを鼓舞するためでもない。酔い方ではなく純粋な愉しみ方を教えてくれた、恩人のためだ。

 といっても、今は勤務中の身。いくらこのバーに魅力的な空気を感じても、店の中まで入るわけにはいかない。

「やはり私は下におります」

 立ち去ろうとしたところで、佐伯に腕を掴まれた。

「お酒は飲ませないから安心して。私も満腹だし、一杯だけ。ただね、あなたに会わせたい人がいるの」
「……会わせたい人とは?」

 とっさに出てしまった問い。
 涼子の興味を引くことに成功した佐伯は、うふふ、と笑い、黒いミディアムのウェーブヘアを色っぽい仕草で片側に寄せた。扉を引いて待つ藤堂に促されると、さっさと中に入ってしまう。

「東雲さんも、どうぞ」

 一瞬ためらったが、藤堂の静かな声と威圧的な無表情に急かされ、仕方なく会釈を返して店内に足を踏み入れる。
 
「いらっしゃい」

 奥から、男の声がした――。その柔らかな低音の持ち主は、カウンターの向こうで静かに微笑んだ。

/429ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ