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琥珀色に染まるとき
第3章 出会いは静かな夜に

黒を基調としたシックな店内に、ブルーのバックライトがよく映える。漆黒のバーカウンターに、背もたれのついた脚長のバースツールが十席のみ。主張しすぎない音量でピアノジャズが流れる、こじんまりとした、しかし妙に落ち着く不思議な空間だ。
カウンターの奥で一人佇む男は、美しく整った顔立ちに柔らかな微笑をたたえて待っている。今は客がいないようだし、佐伯が言った“会わせたい人”とはこの男のことだろうか。
佐伯は、涼子を店の奥まで導くと、勝手に紹介を始めた。
「マスター。こちら、私のボディーガードをしてくれている涼子ちゃん」
涼子ちゃん――その呼び名にはどういう反応をしたらいいか迷う。前回の警護で好感を持たれ、親しみを込めてそう呼ばれたというのはわかるが、やはり三十歳にもなると抵抗感がある。
その気持ちはそっと胸の奥に仕舞い、こんばんは、と男に向けて挨拶すると、優しい笑みを返された。
「初めまして、西嶋です。どうぞこちらに」
「はい。失礼します」
店奥の壁際から三番目の席には、すでに佐伯が優雅な動きで腰かけているところだった。彼女を挟むかたちで、壁に近い左側に涼子、右に藤堂が腰を下ろす。
ようやく三人が席についたところで、低く上品な声が落とされた。
「さて。なににしますか」
「今日はあと一杯だけって決めてるの」
「では理香さんはいつものですね」
「そうね、お願い」
「私と東雲さんは、甘さひかえめなノンアルコールカクテルを」
藤堂が続いて慣れた口調で注文すると、こら、と言って佐伯が口を尖らせた。

