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琥珀色に染まるとき
第14章 MY FOOLISH HEART

「あああん……っ!」

 腹の底から溢れ出たのは、悲鳴のような嬌声だった。

「涼子」

 すぐに西嶋が倒れこむように覆いかぶさってくる。汗ばんだ熱い身体に包まれ、息ができなくなるほどに強く抱きしめられた。直後、一気に奥を揺さぶられる。

「やっ、いやぁっ!」

 絶頂を迎えたばかりの身体は、やがて、いっそう激しい律動に襲われて弾け飛ぶ。聞こえてくるのは、濡れた素肌がぶつかり合う卑猥な音。互いの唇から荒く吐き出される、湿り気を帯びた喘ぎ。

「ああっ……りょう、こっ……」

 その切迫したかすれ声が鼓膜を撫でた瞬間、涼子の身体は弓なりに反り、収縮を繰り返す自分の中でどくどくと脈打つ猛りとともに、そのときを迎えた――。


 いつの間にか重ねられていた大きな手から、西嶋の想いがじんわりと全身に流れこんでくる。

「涼子……」

 乱れる呼吸を抑えながら耳元で囁かれたその声は、このうえなく優しい。

「愛してるよ」
「……っ」

 視界に溢れかえる涙が、温かなしずくとなって目尻から伝い落ちる。

 今だけでいい。この腕のぬくもりに包まれている間だけもでいい。せめて今だけは、心を満たすこの幸福な時間に酔っていたい。溶け落ちそうな意識の中で、涼子はそんなふうに思った。

「景仁、さん……」

 真直ぐに見下ろしてくるその熱い瞳はもう、孤独も、哀しみも、孕んではいない。そんな美しいヘーゼルの瞳に見つめられながら、涼子は、重くなってきたまぶたを下ろした。


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