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琥珀色に染まるとき
第15章 A TIME FOR LOVE
第十二章 A TIME FOR LOVE
十二月二十四日土曜日、午後十一時。
都会のネオンサインが、澄みきった冬の空気の中でいっそう輝く夜。一年に一度の恋人たちのイベントにより、街はふだんより浮き足立っているように見える。そんな中、ひっそりと通常どおりに営業する、BAR Clay――。
「ねえ、マスター。お店閉めたあとは予定あるの?」
華やかに整った顔を無防備に崩すその女は、例によって深い谷間を見せつけるようにしてカウンターに頬杖をついた。
「ありますよ」
「へえ。結構体力あるんだね」
グラスを傾けながら妖しげな笑みを浮かべた明美は、おそらく最も聞きたかったであろうことを口にする。
「藤堂さん、今日は来ないのかな?」
「どうでしょうね。いつもなんの前触れもなく来るので。連絡してみましょうか」
「いや、いいよ! ここで飲みたかっただけだし、彼には偶然会えたらなって……」
グラスを持つ手とは反対のそれをぶんぶんと振りながら、声をあげる明美。その頬は心なしかチークとは違う具合に染まっているように見える。
「だからもうちょっとだけ付き合ってね、マスター」
せっかくの休みをこんな店で過ごすほど藤堂に会いたいとは、まったく物好きな女である。あの一件以来、これまで以上にここに顔を出すようになった明美は、どうやらあの堅物に好意を寄せているらしい。年下には興味がないと言われたことが、かえって彼女の闘魂に火をつけたのだろう。
男依存の対象が自分からそれたことは嬉しいが、その矛先が旧友に向いてしまったことは気の毒としか言いようがない。しかしながら、それは藤堂にとって、ある意味では都合のいいことだった。