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琥珀色に染まるとき
第16章 青い薄闇に埋もれて

 熱い吐息が混ざり合う中、不意に彼は唇を離した。

「このまましていいのか」
「……そんなこと言うの、ずるいわ」
「悪い。どうもお前の可愛い声に弱くて」

 荒い呼吸を抑えたかすれ声で囁かれ、恨めしい視線を送る。
 わざわざ答えるまでもない。淫らな色欲を呼び起こされ疼き始めた身体の芯は、今すぐに彼の欲望にもてあそばれたいと主張している。まともではないことはわかっている。
 ふだんならポーカーフェイスの奥に押しこんでいられる感情的な表情も、必死に保っている平常心を押しのけて表に出てきてしまう。

「ひどいわ」
「どうして?」
「…………」
「責任取ろうか。お前が声を我慢できるなら」

 妖しく揺れるヘーゼルに吸いこまれて危うく頷きそうになったが、涼子は小さく首を横に振った。

「だめよ。汚しちゃうから」
「なにを汚しちゃうの」
「……っ」
「服? それとも椅子か」

 顔を覗きこんでくる、雄のまなざし。かえって彼を煽る結果になってしまったことを知る。
 スーツの上着の内側に滑りこんできたその手が、腰を撫で上げ、シャツの第二ボタンから順に外し始めた。

「あっ……や、だ……」

 その温かい手を包んで制止を求めるが、欲情した男の独特な空気感に圧され、強く拒否することができない。むしろ心の底では、彼になら強引に理性を奪い去られたいとひそかに願っている。
 あっという間にシャツの前が開かれ、胸元があらわになった。ブルーのバックライトの下、浮かび上がる青白い肌を彼は目を細めて見つめる。

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