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第17章 青い薄闇に埋もれてⅡ

「涼子」

　表情を見たくてその名を呼ぶ。おもむろに顔を上げた彼女は、甘い息を吐きながら、今にもしずくを落としそうな艶やかな瞳を向けてくる。

「景仁、さん……」

　扇情的な赤い唇がそう呟いたかと思うと、なにかが下半身のふくらみに触れた。

「……っ」

　彼女の細い手が、スラックス越しに分身を撫でている。遠慮がちで繊細な、しかし確実に意思を持ったその動き。

「涼子……」

　たまらずぴくりと反応を示すそれは、窮屈な服の中で痛いくらいに膨張し、早く解放してくれと訴える。思わずベルトをゆるめる手が荒くなった。
　ボクサーパンツから姿を現した猛りを掴み、彼女の片脚を持ち上げ、甘い香りを漂わせる裂け目にあてがう。

「涼子」

　ぬかるみの中にゆっくりと自身を沈めると、彼女は弱々しい鳴き声をあげながら悩ましげに眉を寄せた。景仁はその細い腕を取り、自分の首に回させた。柔らかな身体が抱きついてくる。

「あ、あ……景仁さっ……」

　彼女の体内を貫く分身に絡みつくようにうねる蜜壁。襞がまとわりつき、奥へと吸いこんでいく。腰を動かして性器同士を摩擦させなくとも、まるで生き物のように動く内部にそうやって刺激を与えられ、気を抜けば果ててしまいそうだ。
　いつの間にか、無意識的にそんな技術を身につけた彼女は、自身が必死に快感に耐えている間、景仁を翻弄し続けていることなど知る由もない。

　これまで決して頻繁に会えるわけではなかったが、会うたびに、確かな愛情を、深く、注ぎ合ってきた。抱き合うごとに彼女は艶かしさを増していき、与える快感に素直に応えるようになった。
　しわのできたシーツの上で、景仁の身体の上で。激しく乱れ、蜜に濡れた身体を開くその姿は、ときに花咲くように美しく、ときに蝶舞うように可憐で、景仁を虜にした。そして、今も……。