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琥珀色に染まるとき
第18章 白い靄の中に
第十八章 白い靄の中に
腰が砕けてへたりこんでしまった身体を抱えられ、西嶋の車で彼のマンションに帰ったとき、時刻は午前二時になろうとしていた。
「先にシャワー浴びてくるよ」
「……うん」
ふと、おかしそうに笑われた。残念そうな表情を隠せていなかったらしい。
「一緒に入るか」
その声色と意地悪な笑みでそれがあきらかに冗談だとわかるので、本当は一緒に湯船につかりたいという気持ちを隠して無言を返すことしかできない。
身体も心も温かくほぐされれば、彼に聞きにくいことも、いくらか口に出しやすいと思ったのに。
「なんだ。一緒に入ってくれると思ったのに、残念だな」
西嶋はにやりと口角を上げる。
「……じゃあ、仕方ないから入ってあげる」
心の中を透視され、半ばやけくそに答えれば、彼は愉しげに肩を揺らした。
湿った熱気を帯びた浴室内に漂う、靄のような湯気の中に隠れるようにして身体を洗い、広い浴槽の中に肩まで浸かる。
後ろから、腹に滑りこんだ手に引き寄せられた。湯の中で背中越しに感じるたくましい胸板、触れ合う腕と脚……心地よい圧迫感に包まれる。
不意に、露出している耳を撫でられた。
「んっ……」
首筋に下りてくる指。まるで愛撫にも似たそれ。前にも一度、こんなふうにしてまとめ髪を強調するような仕草をされたことがある。
「お前、またこんな髪型にして」
耳元で囁く優しい声。濡れた空間に響くその低音は、ふだんより艶かしく鼓膜を振動させる。きつく目を閉じ、それだけで勝手に反応しそうになる素直な身体を戒める。
「ただまとめてるだけじゃない……」
「うん」
「そんなに好きなの?」
思わず尋ねると、ははっ、と声を出して笑われてしまった。