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琥珀色に染まるとき
第18章 白い靄の中に

俯きがちにその表情を窺えば、彼はふふっと噴き出す。
「さっきはあんなに大胆だったのに」
からかうように言い、不意に耳元に唇を寄せてきた彼は、かすれ声で囁いた。
「なあ、涼子。もう限界だよ……」
内緒話のような吐息混じりの声が、鼓膜を揺さぶる。耳の中を蠢く湿った舌、背中を優しく這う手のひらに、脳がじんわりと熱を帯びて意識が甘く溶けていく。
「んっ、やぁ……」
「涼子」
その声には、“ここでいいだろう?”という問いが隠されている。肌を重ねるたびに彼が涼子の身体を知りつくしていくように、涼子もまた、彼の求めるものを心で感じ取るようになった。
「だめ……もう熱くて、のぼせちゃう」
「ああ、俺もだ」
その優しい声色にふさわしくない、強引な手つきで抱き上げられ、浴槽から出るように促される。
「おいで」
浴室から出ると、すうっと熱がひいていくのがわかった。すかさず、彼がタオルで丁寧に身体を拭いてくれる。ぼんやりと身を任せ、涼子はふと、壁に貼られた大きな洗面鏡に映る互いの裸体に目をやった。
明るい照明に晒された、男と女。鏡を通して眺める自分の身体が妙に艶かしく見えるのは、後ろに立つ彼の広い肩やたくましく引き締まった腕によって、女らしい曲線が強調されるからだろう。
「なに見てるんだよ」
愉しげに言って前かがみになり、肩に顎を預けてくる色男。その少し上目遣いの微笑が、鏡越しに視界を犯す。
「ベッドに行くか」
「…………」
「ん?」
不意に、両胸のふくらみを下からすくわれた。先端の突起を指の間でもてあそばれながら、ゆったりとした動きで揉み上げられる。その様子が、目の前に映し出されている。
「あっ……あん……」
「その顔」
耳元で優しく囁き、目を細める。その端正な顔の隣には、頬を染めた女の顔がある。

