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琥珀色に染まるとき
第19章 面影との再会

のんびりと会話をしながら愛車の待つ駐車場に着くと、黒光りする流麗なボディーを眺めつつ助手席のドアを開ける。
「あ、ありがと……」
短く発して身をかがめる彼女の横顔が、少しばかり照れている。仕事では彼女自身がこうして誰かにドアを開けてやっているのだから、いざ自分がされる立場になると居心地が悪いのだろう。
「まだ慣れないか。開けてもらうの」
こぼれ出る笑みを我慢せずに尋ねると、彼女は恨めしそうにこちらを一瞥してから車に乗りこむ。ドアを閉め、景仁は微笑ましい気分で運転席に回った。
なにより、景仁にとって今日の一番の収穫は、半ば強引に試着させたエンゲージリングで涼子の指のサイズを把握したことだった。
彼女はそれを冗談と捉えたらしく、最初はなんともいえない微妙な笑みを浮かべていたが、ちょうど着けた指輪のデザインをかなり気に入った様子だった。まんざらでもなさそうに自身の左手をじっと眺め、ほうっとため息をついた彼女を見て、景仁は自分の中をむずむずと這い上がるなにかを感じた。
「……ねえ」
「ん?」
「行きたいところがあるんだけど」
気分よく愛車を走らせているところに、不意に助手席からこぼされた提案。
「いいよ。どこでもお前の好きなところに行こう」
「あのね」
「うん」
「……真耶さんの、お墓に」
そう言った彼女は、前方に集中しているようにも見えるが、どこも見ていないようでもある。要するに、うわの空なのだ。もしかしたら、車に乗ってからずっと切り出すタイミングを考えていたのかもしれない。
「ああ。行こう」
「いいの?」
「もちろん」
口角を上げて答えると、景仁は車線変更のためにハンドルを切った。

