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琥珀色に染まるとき
第19章 面影との再会

***
「ここだよ」
「…………」
ふと助手席を見てみると、真耶が生前好きだったカサブランカの花束を抱いて不安げに墓所を見つめる涼子がいる。
「そんなに握りしめたら花が潰れるぞ」
笑いながらそう言ってやる。はっと我にかえった彼女は、こちらに視線を向けるがすぐに俯き、ごめんなさい、と小さく呟いた。
「心配するな。二人で一緒に行くんだから」
うん、と彼女は力なく頷く。花束に添えられているその白い手をそっと包み、景仁は苦笑した。
「冷たいな」
「景仁さんの手は、温かい」
一つ深呼吸をした彼女は、落ち着きを取り戻したように柔らかな微笑みを見せた。重ねた手に力を込めれば、細い指が絡められる。
「ありがとう。もう大丈夫」
「よし、行こう」
もう一度その手を握ると、一瞬強く握り返され、そうしてゆっくりと離された。
朝比奈家之墓――その墓石の前で立ち止まると、後ろを歩く彼女の足音も止んだ。
「涼子」
こちらを見上げるその黒い瞳が、今にもしずくを落としそうに揺れる。しかし、それはすぐに凛とした強さをまとった。目の前に佇む墓石に意を決したように向き合う彼女を見守り、景仁も同じくそれを見据えた。
――真耶。涼子を連れてきたよ。
「……真耶さん」
隣に立つ涼子が、その名を口にした。
「会いにくるのが遅くなってしまい、申し訳ありませんでした」
そう言って頭を深く下げた彼女は、カサブランカの花がよく見えるよう墓のほうに差し出した。
「真耶さんの、好きなお花……」
「…………」
「真っ白な……」
「…………」

