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琥珀色に染まるとき
第19章 面影との再会

 黙って頷いた彼女は唇を震わせ、溢れそうな涙をまぶたに溜めて必死にこらえている。

「今を、大切に生きることだよ」
「……はい」

 彼女は目をそらすことなく、なにかを決意したように固く返事をした。

「もうお前を独りにしないよ」
「私も……」

 彼女はそこまで口に出すも墓石へ一瞬目をやり、今にも泣き出しそうに眉をひそめる。その様子を静かに見守ったあと、景仁は包みを解いたカサブランカを手にして立ち上がり、花立てに供えた。
 真っ白なその花と顔を合わせると、真耶に見つめられているような気分になる。かつて愛した女が眠るこの場所で、今最も愛する女と交わそうとしているのは、生涯の約束だ。

「ここで言うのは不謹慎だと思うか?」

 後ろに立つ涼子に尋ね、ゆっくりと振り返る。言葉を詰まらせ黙りこんでいた彼女は、やがて小さく頷いた。

「そうだな、現実は甘くない。だが一緒に生きると決めた以上、ここで真耶に誓わなければならない。俺はそう思うよ」

 震えるまつげの奥で揺れるかげりなきその瞳を、この先もそばで見続けていたい。揺るぎない覚悟とともに望むことは、ただそれだけなのだ。

 涼子に持たせてあった袋に手を伸ばすと、それに気づいた彼女は中から線香一束とライターを取り出した。線香の束に巻かれた紙を外し、着火したライターを先端に寄せるも、うまく火が付かないようだ。

「いいよ、ありがとう。貸してごらん」

 言いながら手のひらを見せれば、申し訳なさそうな表情で差し出される。それらを受け取り、自然にこぼれる笑みを返した。

「難しいよな、これ」

 そう言っている間にも、ライターの炎は線香の端を燃やし始めた。数回振って火を消し、横にして香炉に供える。周囲の空気が高貴な香りで浄化されていく。

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