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琥珀色に染まるとき
第19章 面影との再会

「ごめんなさい。不器用で」
「そんなに拗ねるなよ」
「別に拗ねてなんか……」

 少し感情的になって俯くその姿を見ていると、腹の底から愛おしさが湧き上がった。

「泣いたり怒ったり、忙しい女だな」
「……そうよ。面倒な女だもの」
「知ってる」
「…………」
「そういうところも、どうしようもなく好きだ」
「なにそれ……」
「ははは」

 墓石の前にしゃがんだまま、美しく花開くカサブランカを見据える。両手を合わせ、ゆっくりと目を閉じた。
 まぶたの裏に映し出されるのは、太陽のような笑顔。その瞬間、ずいぶん昔にかけられた言葉がよみがえった。


――あなたって他人の世話ばかり焼くのね。もっと自分の幸せを考えなさいよ。


 景仁はひっそりと口角を上げ、心の中で最後の願いを唱える。

――真耶。俺の幸せを、許してくれ。

 冷たい北風が頬を撫で、どこかに消えていくのを感じた。


「お兄さん?」

 突然呼ばれた、自分の愛称――。
 近づいてくる足音に目を開け、声がした方に振り向いた。

「……っ」

 景仁は、言葉を失った。
 あまりの衝撃に全身がこわばる。よりによって今日、こんな形で、再会が果たされることになるとは予想していなかった。

 はっとして涼子を見下ろす。真っ青な顔、驚愕と困惑でわななく唇。あきらかに、そこに佇む人間に怯えている。

「やっぱりお兄さんだ。最近よく会いますね」

 真耶によく似た笑顔、よく似た声。そして真耶と同じその瞳が、涼子の姿をとらえた――。

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