この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
琥珀色に染まるとき
第19章 面影との再会

「ごめんなさい。不器用で」
「そんなに拗ねるなよ」
「別に拗ねてなんか……」
少し感情的になって俯くその姿を見ていると、腹の底から愛おしさが湧き上がった。
「泣いたり怒ったり、忙しい女だな」
「……そうよ。面倒な女だもの」
「知ってる」
「…………」
「そういうところも、どうしようもなく好きだ」
「なにそれ……」
「ははは」
墓石の前にしゃがんだまま、美しく花開くカサブランカを見据える。両手を合わせ、ゆっくりと目を閉じた。
まぶたの裏に映し出されるのは、太陽のような笑顔。その瞬間、ずいぶん昔にかけられた言葉がよみがえった。
――あなたって他人の世話ばかり焼くのね。もっと自分の幸せを考えなさいよ。
景仁はひっそりと口角を上げ、心の中で最後の願いを唱える。
――真耶。俺の幸せを、許してくれ。
冷たい北風が頬を撫で、どこかに消えていくのを感じた。
「お兄さん?」
突然呼ばれた、自分の愛称――。
近づいてくる足音に目を開け、声がした方に振り向いた。
「……っ」
景仁は、言葉を失った。
あまりの衝撃に全身がこわばる。よりによって今日、こんな形で、再会が果たされることになるとは予想していなかった。
はっとして涼子を見下ろす。真っ青な顔、驚愕と困惑でわななく唇。あきらかに、そこに佇む人間に怯えている。
「やっぱりお兄さんだ。最近よく会いますね」
真耶によく似た笑顔、よく似た声。そして真耶と同じその瞳が、涼子の姿をとらえた――。

