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琥珀色に染まるとき
第19章 面影との再会

「そちらの方は……」
一瞬、涼子に射るような視線を向けてから、実耶はこちらを見た。
「お兄さんの彼女?」
「ああ」
平静を装って一言返すと、実耶が取り繕った笑みを涼子に送る。
「はじめまして。朝比奈実耶です」
「……っ」
「姉のお知り合いなんですか?」
「実耶。彼女は」
景仁が言いかけたとき、隣で涼子が息を吸った。彼女が実耶に返したのは、イエスでも、ノーでもなかった。
「ごめんなさい……」
「え?」
寒空の下、実耶は怪訝な表情で立ちつくしていたが、ふとなにかを思いついた顔をした。
「ちょっと待って。彼女さん、お名前は?」
沈黙が流れる中、風の音だけが無遠慮に通り過ぎていく。そのとき、どこからともなく飛んできた枯れ葉が、実耶の足元にかさりと落ちた。しゃがみこんだ実耶がその葉を拾い、そのままの姿勢で言った。
「お姉ちゃんと一緒に襲われた人、涼子って名前なのよ」
立ち上がった実耶がその手から枯れ葉を離すと、地面に落とされたそれは、再び風に吹かれてかさかさと音を立てた。
「ねえ、あなた。名前を教えて。……ねえ」
「東雲、涼子です」
涼子は震える声で言った。彼女を見上げる実耶の、厚手のマフラーからこぼれた栗色の髪が風になびく。
「……そう。あなた、やっぱりそうなんだ」
その哀しげな視線が、景仁をとらえた。
「お兄さん、なんで? なんでこの人と一緒にいるの?」
「実耶……」
「なんで今さら、お兄さんの前に現れたのよ。お姉ちゃんの人生を奪っておいて、今まで一度だって顔を見せなかったくせに、お兄さんまで奪うの?」
涼子が唇を噛みしめる。なにかを言い返すことも許されず、ただひたすらに耐えている。

