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琥珀色に染まるとき
第19章 面影との再会

 猛烈に湧き上がった激情に突き動かされ、景仁は震えるこぶしを強く握った。自分にはこの感情をあらわにする資格などないとわかっていたが、荒ぶる心を止められなかった。

「俺がこの人と一緒にいるのは、自分の意志だよ。責めるなら、俺を責めてくれないか」

 気づいたら、そう口走っていた。

 驚きに目を見開く実耶に次の言葉をかけようとしたとき、隣から腕を強く掴まれた。見下ろすと、涼子が泣きそうな顔でこちらを見上げ、首を大きく左右に振っていた。
 その哀しげな瞳が訴えようとしていることは、すぐにわかった。今はなにを言っても否定的に捉えられてしまうだけだと。これ以上言ってしまえば、真耶の家族とは二度と歩み寄ることができなくなると。
 どれだけ非難されても、涼子はそうなることを望んでいない。

「お兄さん。……その人と、二人で話をさせてください」

 実耶が、固い声で言った。そんなことはさせられない、と景仁が口を開きかけたとき、隣でか細い声がした。

「わかりました」
「涼子……」
「車に戻ってて」
「だめだ」
「お願い」

 その青白い横顔は、これ以上の反論を許さない。涼子は、怒りと哀しみが混ざった表情で立ちつくす実耶に静かに向き合った。二人の間に漂い始めた空気に押し出されるように、景仁はやむなくその場を立ち去った。

 真耶の肉親である実耶は、終わることのない哀しみを抱えてきた。涼子は遺された当事者として、遺族とは違う苦しみと孤独に耐えてきた。だが、それぞれの心に残る傷の大きさを比較することはできないし、被害者同士が恨み合うのは筋違いである。
 真耶の人生を奪ったのは涼子ではない。どんな経緯があろうと、どんな理由があろうと、真耶の人生を奪ったのは、事件を起こした犯人なのだから。

 車の外で地獄のような時間に耐え、五分ほどした頃、涼子が一人で戻ってきた。その顔は無表情だった。

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