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琥珀色に染まるとき
第20章 ラスティネイルの夜

 目が合うと、藤堂は薄く笑む。

「理性や体裁。そういったものがどうでもよくなってしまうくらい、君にご執心なのさ」

 そう言うと、彼は再びグラスに向き直る。涼子もまたロブ・ロイを一口飲み、琥珀の中に沈むチェリーの赤い煌めきを見つめた。

「……でも、どうして私なんでしょうか」

 これまで口に出さずとも、ずっと気になっていたことだった。小柄で華奢、童顔という容姿からは想像できないような、芯の強いしっかりとした女性。そんな真耶と自分とでは外見も内面も違いすぎる、と。
 正反対だからこそ西嶋は自分に惹かれたのだろうかと、心の隅にはそんな考えが消えない影のように張りついていた。誰にも言うまいと思っていたが、西嶋をよく知る彼らには隠さずにいられなかった。

「その理由を聞いたら東雲さん、がっかりするんじゃないでしょうか」
「うーん。どうだろうねぇ」

 藤堂の言葉にそう返す榊は、西嶋よりもずっといたずら好きな少年のように見える。涼子は男たちの顔を交互に見ながら、甘いチェリーを口に入れた。

 ひかえめで柔らかな照明の中、カウンターの向こうで優しい笑みを浮かべる榊。その背後では、バックバーに整然と並べられたボトルたちが淡い光に照らされて輝いている。神々しささえ感じられる光景のもと、彼は目を細めて言った。

「簡単ですよ。あなたのような女性がタイプだからです」
「…………」
「おや。やはりがっかりされましたか」
「いえ、そうではなくて……そんな理由は想像していなかったので」

 榊は、その優しい顔に意味深な含み笑いを浮かべる。どこかで見たようなその色気ある表情は、彼らの師弟関係の深さを物語っている。

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