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琥珀色に染まるとき
第20章 ラスティネイルの夜

 真耶の家族との会遇も、非難されることも、心のどこかで予想していた。まるで、頼りなく燃えるろうそくの火が冷たい風に晒されるように、常に不安を胸に宿し、怯えていた。
 西嶋とともに生きると決心したはずの心は、簡単に揺らぎ、かすかな風で消えてしまいそうだった。

 昨日の一件でよくわかったのだ。西嶋は変わらず前向きな愛を与え続けてくれたのに、自分にはそれを受け止めるだけの自信がなかった。彼に愛され続ける覚悟も、彼を想い続ける覚悟も、本当はまだできていなかったのだと。

「私、もう一度よく考えてみます。どうするべきなのか。……ちゃんと答えが出たら、彼に会いにいきます」
「それは、結論が出るまであいつに会わないということか」

 藤堂が、心配そうな表情でこちらを見つめている。

「景仁さんを好きという気持ちは変わりません。たぶん、どうやっても変えられないと思います。でも今の私には、彼のような余裕が足りないんです。なにがあっても彼のそばを離れない自信と、余裕。だから……」
「あいつに、余裕?」

 その言葉を繰り返した藤堂は、ひかえめに声を出して笑った。榊が差し出した二杯目のマティーニを煽り、おもむろにグラスを置くと、その手元に視線を落としたまま口を開いた。

「そう見えるだけさ。君の前では格好つけてるんだ」
「そうそう。あの男、ああ見えてけっこう不器用なんだけどねぇ」

 藤堂を追って愉しげに言った榊が、優しいまなざしをよこす。

「景仁は弱音を吐かないでしょう?」
「はい。いつも支えてもらってばかりです」
「それはね、涼子さんを過去の苦しみから救い出し、未来に導こうと必死だからですよ。余裕なんてこれっぽっちもありません」
「……っ」

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